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勤務医のバイト代、なぜ税金が高い?|源泉徴収(甲欄・乙欄)と確定申告

勤務医の先生方の中には、「バイト先の給与明細を見たら、思ったより手取りが少ない⋯」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

バイト先のほうが、常勤先の給与よりも税金の引かれ方が大きく見えるのは、税制上の仕組みによるものです。

本記事では、「甲欄・乙欄」という源泉徴収の仕組みと、最終的に確定申告でどう精算されるのかをお伝えします。

目次

源泉徴収における、甲欄と乙欄の違い

給与から源泉徴収される所得税額は、「給与所得の源泉徴収税額表」に基づいて計算されます。この税額表には甲欄乙欄という区分があり、どちらが適用されるかで天引きされる税額が大きく変わります[1]

  • 甲欄:「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している勤務先に適用されます。2ヶ所以上から給与を受ける場合、この申告書は主たる給与を受ける勤務先1ヶ所にのみ提出します[2]
  • 乙欄:上記の申告書を提出していない勤務先に適用されます。

勤務医の先生方は、常勤先(主たる給与)に扶養控除等申告書を提出しているはずです。そのため、非常勤バイト・スポット勤務先(従たる給与)では、この申告書を提出していない状態になり、自動的に乙欄が適用されます。乙欄は、甲欄よりも高い税額が設定されていることが多く、通常は扶養控除等申告書による人的控除を主たる給与ほど反映しません。つまり、「バイト先の税金が高く感じる」のは、”乙欄”という区分が適用された結果であり、天引きされている金額自体は間違っていない、ということになります。

なお、一定の要件を満たす場合には「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出し、乙欄の源泉徴収額を調整できる制度もあります。ただし、これは主たる給与だけでは扶養控除等を控除しきれないと見込まれる人向けの仕組みであり、誰でも利用できる節税制度ではありません。また、最終的な所得税額を減らすものではなく、確定申告前の源泉徴収額を調整する制度です。

複数の勤務先を持つ場合に関わる制度としては、「二以上事業所勤務届」というものもあります(こちらの記事で解説しています)。これは健康保険・厚生年金の被保険者資格に関する年金事務所への届出であり、本章の甲欄・乙欄(所得税の源泉徴収に関する、勤務先への扶養控除等申告書の提出の有無)とは別の制度です。

乙欄で多く引かれても、確定申告で必ず還付になるとは限らない

「乙欄で多めに引かれているなら、確定申告すれば戻ってくるはず」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これは半分正しく、半分間違いです。

確定申告では、常勤先(主たる給与)とバイト先(従たる給与)のすべての給与を合算したうえで、扶養控除・社会保険料控除等を反映し、その年の本来の年税額を計算し直します。そのうえで、すでに源泉徴収された税額の合計と比較し、差額を精算します。

  • 源泉徴収された税額の合計が、本来の年税額より多ければ 還付
  • 源泉徴収された税額の合計が、本来の年税額より足りなければ 追加納税

勤務医の場合、非常勤収入を合算すると年収全体が高水準になることが多く、乙欄で多めに引かれていたとしても、合算後の年税額自体がそれ以上に高くなるため、還付にならない、あるいは追加納税になるケースも珍しくありません

勤務医がバイトをしているなら、基本的に確定申告は必要

常勤先とは別に非常勤バイト・スポット勤務をしている勤務医では、基本的に確定申告が必要です。

理由は、2か所以上から給与を受けている場合、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得・退職所得以外の所得金額との合計が20万円を超えると、原則として確定申告が必要になるためです[2]

医師のバイトでは、年間で合算すると20万円を超えることがほとんどのため、「バイトを継続的にしている勤務医は原則的に毎年の確定申告が必要」と考えておきましょう。

また、年間の給与収入(額面)が2,000万円を超える場合は、バイト収入の額にかかわらず、原則として確定申告が必要です[2]。つまり、常勤先から2,000万円を超える額面の給与収入を受け取っている場合、一切バイトをしていなくても確定申告が必要になるということです。

例外的に確定申告が不要になる場合

一方、給与収入が2,000万円以下で、年末調整されなかった給与収入などの合計が20万円以下であれば、所得税の確定申告が不要となる場合があります(例:専攻医で、年数回のスポットバイトしか行かなかった場合)。
ただし、この「20万円ルール」は所得税に関する制度です。所得税の確定申告が不要でも、住民税については別途申告が必要になる場合があります。詳細は住所地の自治体で確認してください。

2か所以上から給与を受け取っている場合でも、給与収入の合計額から一定の所得控除を差し引いた金額が150万円以下で、かつ給与所得・退職所得以外の所得が20万円以下であれば、確定申告が不要となる例外があります。ただし、この例外は給与水準が比較的低い人を想定したものです。一般的な勤務医では、給与収入から社会保険料控除や扶養控除などを差し引いても150万円以下になることは通常考えられないため、この例外に当てはまることは無いと考えて良いです。

フリーランス医(バイト医)と扶養控除等申告書

ここまでは、常勤先を持ち、それとは別にバイトにも行っている勤務医を前提に説明してきましたが、ここでは、フリーランス医、すなわち特定の病院に常勤の雇用契約を持たず、複数の医療機関でのスポット勤務あるいは非常勤勤務のみで働いている医師(いずれの勤務先でも被保険者資格を持たない医師)の年末調整と確定申告について補足しておきます。

甲欄・乙欄の仕組み自体は、常勤先があるかどうかにかかわらず同じです。区分を決めるのは「常勤か非常勤か」ではなく、給与所得者の扶養控除等申告書をどの勤務先に提出しているかです。

フリーランス医でも、複数の勤務先のうち1か所に扶養控除等申告書を提出すれば、その勤務先の給与には甲欄が適用され、その他の勤務先では原則として乙欄が適用されます。一方、どの勤務先にも提出しなければ、すべての勤務先で乙欄による源泉徴収となります。

扶養控除等申告書を提出しないデメリット

扶養控除等申告書を提出しなくても、最終的に確定申告を正しく行えば、扶養控除などを含めた本来の所得税額に精算されます。そのため、提出しなかったこと自体で最終的な税負担が必ず増えるわけではありません。

ただし、これを提出しない場合、人によってはデメリットと感じる事項が何点か生じます。

まず、すべての勤務先で乙欄による源泉徴収となるため、年の途中で所得税が多めに天引きされます。その結果として、還付を受けるまで手元資金が減るというキャッシュフロー上の不利が生じます。

また、扶養控除等申告書を提出していない勤務先では原則として年末調整を受けられません。そのため、扶養控除や保険料控除なども含め、最終的な税額調整を自分で確定申告によって行う必要があります。確定申告での申告漏れがあれば、本来受けられる控除を反映できないままになる可能性もあります。

そのため、複数の勤務先から給与を受け取るフリーランス医であっても、主たる給与を受ける勤務先には扶養控除等申告書を提出するのが基本です。これは節税のためというより、源泉徴収と年末調整を適正に行い、税務処理を簡便にするための手続きと考えると分かりやすいでしょう。国税庁も、給与所得者である限り、扶養控除等申告書の提出を推奨しています。

なお、完全なるスポットバイト医で、「主たる勤務先」と形容できるような医療機関がない場合は、扶養控除等申告書を提出せず、確定申告でミスをしないように気をつけるという運用にせざるを得ないかもしれません。

扶養控除等申告書は、どのように提出すればよいの?

扶養控除等申告書は、その年の最初の給与の支払を受ける日の前日までに提出する書類です。フリーランス医の場合は、毎年、継続的に勤務する医療機関のうち1か所を「主たる給与の勤務先」として決め、原則としてその年最初の給与支払日の前日までに扶養控除等申告書を提出します。年の途中から勤務を始めた施設に提出したい場合は、その勤務先で最初の給与を受ける前に提出します。

ただし、扶養控除等申告書を年の途中まで提出していなかった場合でも、気づいた時点で勤務先に提出すれば問題ありません。
提出後、最初に支払われる給与から甲欄が適用されますが、それ以前に乙欄で源泉徴収された分が遡って再計算されるわけではありません。過去分を含む最終的な所得税額は、年末調整や確定申告で精算されます。


この記事を読んで申告書の提出を思い立った場合は、勤務先の事務に「今年分の給与所得者の扶養控除等申告書をこちらに提出したいのですが、用紙をいただけたりしますか?」と声をかけてみましょう。もし「自分で用意してください」と言われたら、国税庁の公式サイトからPDFをダウンロードできますので、今年分のものを選択し、記載例を参考にしながら印刷・記入して提出しましょう。

フリーランス医はマイクロ法人を設立することで、保険料を削減することができる可能性があります。この点については、以下の記事を参照してみてください。

よくある質問

乙欄で引かれた税金は、必ず確定申告で戻ってきますか?

そうとは限りません。確定申告では常勤先・非常勤先すべての給与を合算して年税額を計算し直すため、非常勤収入を含めた年収全体が高ければ、還付にならない、あるいは追加納税になることもあります。

バイトの収入が合計で20万円以下なら何もしなくていいですか?

所得税の確定申告は不要になる場合がありますが、住民税の申告は別途必要になることがあります。お住まいの市区町村への確認をおすすめします。

フリーランス医(バイト医)は、扶養控除等申告書を提出しなければならないのですか?

提出すべきです。最終的に確定申告を正しく行えば、扶養控除などを含めた本来の所得税額に精算されますが、キャッシュフロー上の不利が生じたり、確定申告時にミスをすれば控除を受けられなれなかったりするからです。国税庁も、給与所得者である限り、扶養控除等申告書の提出を推奨しています。

まとめ

  • 非常勤バイト先の税金が高く感じるのは、扶養控除等申告書を提出していない勤務先に適用される「乙欄」という区分によるものです。
  • 乙欄で多く引かれていても、確定申告で必ず還付になるとは限りません。
  • 20万円ルールは所得税だけの話で、住民税の申告は別途必要になる場合があります。
  • フリーランス医(バイト医)は、扶養控除等申告書をどこかの非常勤先に提出すべきです。

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<出典>
[1] 国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表」税額表の使用区分 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2026/data/19-22.pdf
[2] 国税庁 タックスアンサー No.2520「2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2520.htm

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この記事を書いた人

高所得層のための「キャピタル研究室」を運営しています。
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