MENU

医師年金は入るべき?デメリット、iDeCoとの違い・受取額・利率を解説

医師年金は、日本医師会が運営する私的年金制度です。加入を検討する際には、予定利率や受取額だけでなく、掛金の税務上の扱いや、途中脱退・日本医師会退会時の取り扱いも確認しておく必要があります。
この記事では、医師年金の仕組みから、iDeCoとの違い、脱退・退会・死亡時の扱いまで、加入を判断するために必要な情報をお伝えします。

目次

医師年金とは

医師年金は、公益社団法人日本医師会が運営する私的年金制度です。加入資格は、日本医師会会員かつ64歳6か月未満であることです。ただし、事務手続きの都合上、申込みは64歳3か月までに行う必要があります[1]。

「私的年金」とは、公的年金に上乗せして任意で加入する制度であり、年金制度を「3階建て」と捉えた場合の”3階部分”に当たります。

掛金は、月額12,000円(または年額138,000円の一括払等)の基本年金保険料と、任意で上乗せできる加算年金保険料(月払は1口6,000円、随時払は1口10万円)の2種類で構成されます[1][2]。
受給は原則65歳から開始でき、75歳まで受給開始を延長することも可能です[1]。

医師年金は、日本医師会が加入者全体の掛金をまとめて運用するという仕組みなので、加入者自身が運用商品を選ぶ必要はありません。

受給方法は、基本年金・加算年金ともに、生涯にわたって同じ年金額を受け取れる「15年保証期間付終身型」のほか、5年・10年・15年の確定年金型から選べる、あわせて4コースが用意されています[1]。

医師年金はいくらもらえる?シミュレーション

受取額は、加入した年齢、基本年金保険料に加えて加算年金保険料をどれだけ上乗せするか、受給開始年齢などによって大きく変わります。

日本医師会公式サイトでは、65歳から月10万円の受給を目標にした場合の年齢別加入例が示されています。

加入年齢月々の払込保険料65歳までの払込保険料総額
25歳4万2,000円2,016万円
45歳9万円2,160万円
60歳40万2,000円2,412万円

この例を見ると、同じ「65歳から月10万円」という目標に対しても、加入年齢が遅くなるほど月々の払込負担が重くなることがわかります[7]。

実際の必要掛金や受取額は、目標とする年金額・加入時期・払込期間・受取方法(終身型か確定年金型か)によって変わるため、自分の条件での正確な試算は、公式サイトのシミュレーションツール(保険料から試算する方式と、受取年金額から逆算する方式の2種類が用意されています)で行ってください。

医師年金の予定利率は1.5%

2026年9月時点で、医師年金の予定利率は年1.5%です[1]。予定利率とは、将来の年金給付額を算定する際の前提となる利率です。医師年金は確定給付型の制度で、払込保険料と予定利率などに基づいて将来の給付額があらかじめ算定されます。ただし、日本医師会は、将来、医師年金の財政悪化等により制度改定が行われた場合には、予定利率が変更になる可能性があることも明記しています[1]。加入を検討する際は最新の数値を公式サイトで確認することが重要です。

医師年金の掛金は所得控除になる?

生命保険や個人年金保険では、支払った保険料の一部が「個人年金保険料控除」として所得控除の対象になり、その年の所得税・住民税が軽減されるケースがあります。しかし、医師年金の掛金についてはこの取り扱いが異なります。

日本医師会は公式サイトで、「医師年金は個人年金保険料控除の対象外です」と明記しています[4]。つまり、医師年金に掛金を払い込んでも、その年の所得税・住民税を直接軽減する効果はありません。

一方で、年金の受給時には、受給額から必要経費を差し引いた金額が「雑所得(その他)」として課税対象になります[4]。医師年金は日本医師会が運営する「私的年金」であり、「公的年金等控除」の対象にはならないためです[9]。
掛金段階での節税効果がなく、受給時にも公的年金等控除が使えないという点は、加入を判断するうえで重要なポイントです。

医師年金を受け取ったら確定申告は必要?

医師年金の年金給付では、源泉徴収は行われません。年間受給額から必要経費を差し引いた額が雑所得となり、日本医師会からは毎年1月中旬に「確定申告額のお知らせ」が送付されます[4]。
雑所得が20万円を超えると確定申告が必要なので、医師年金を受け取っているほとんどの人は確定申告が必要と考えられます。

医師年金とiDeCoの違い

医師年金とよく比較される制度に、iDeCo(個人型確定拠出年金)があります。両者は「老後の資産形成のための私的年金制度」という点では共通していますが、仕組みや税務上の扱いはかなり異なります。

表を用いて、両者を比較してみましょう。

比較項目医師年金iDeCo
掛金の所得控除対象外小規模企業共済等掛金控除として全額が所得控除の対象
加入対象日本医師会会員(64歳6か月未満)国民年金の被保険者(70歳未満まで拡大予定)
掛金の上限基本年金保険料に加え、加算年金保険料を口数単位で上乗せ可能(上限なし)職業等により異なる(例:国民年金第1号被保険者は月7.5万円、企業年金のない会社員は月6.2万円)
運用方式日本医師会が一括運用する確定給付型で、給付額があらかじめ算定される加入者自身が運用商品を選ぶ確定拠出型で、運用実績により受取額が変動する
途中での資金化受給開始前であれば全部脱退・一部脱退が可能。ただし脱退一時金は払込額を下回ることがある原則60歳になるまで引き出せない
受給開始年齢原則65歳から(75歳まで延長可能)原則60歳から(加入期間により異なる)
死亡時の扱い遺族脱退一時金・遺族年金受給権はみなし相続財産。生命保険金・死亡退職金には該当せず、それらの非課税枠の対象外死亡一時金は一定の場合に退職手当金等とみなされて相続税の対象となり、死亡退職金の非課税限度額(500万円×法定相続人の数)が適用される

※上表の「掛金の上限」「加入対象」は、令和8年(2026年)12月に予定されているiDeCoの制度改正後の内容で記載しています。2026年9月現在の制度では、掛金の上限は国民年金第1号被保険者が月6.8万円、企業年金のない会社員が月2.3万円で、加入可能年齢の上限は原則60歳未満です[8]。改正の詳細やご自身への影響は、iDeCo公式サイトや金融機関の案内で最新情報を確認してください。

両者の大きな違いのひとつが、掛金の所得控除の有無です。iDeCoは掛金が全額所得控除の対象となるため、拠出した年の所得税・住民税を軽減できますが、医師年金には掛金段階での所得控除がありません。

一方、医師年金は確定給付型で、加入時点の制度条件に基づいて将来の給付額を見込みやすいのに対し、iDeCoは加入者自身が運用商品を選び、運用実績によって将来の受取額が変わります。

医師年金とiDeCoをどう使い分ける?

医師年金とiDeCoは、どちらか一方を選ぶ制度というより、役割の異なる私的年金として併用できます。

iDeCoは掛金が全額所得控除の対象になる一方、掛金には上限があり、将来の受取額は運用実績によって変わります。これに対して医師年金は、掛金の所得控除はありませんが、確定給付型で将来の給付額を見込みやすく、加算年金保険料には上限がありません。

そのため、まず公的年金の見込額を確認し、iDeCoを税制優遇のある私的年金として活用したうえで、老後に確保したい収入との差額を医師年金で補う、という考え方もあります。

医師年金のメリット

  • 終身年金を確保できる:基本年金は終身で受け取れ、加算年金についても終身型または5年・10年・15年の確定年金から選択できます。基本年金は、生涯にわたって受け取ることができます[1]。
  • 加入時点の制度条件に基づいて将来の給付額を見込みやすい:確定給付型のため、iDeCoのように相場変動によって受取額が上下するリスクを個人が負う必要がありません。
  • 加算年金保険料に上限がなく、増減も柔軟:加算年金保険料には上限がなく、口数単位でいつでも増額が可能です[1]。
  • 受給開始を75歳まで延長できる:加入期間が短い場合や、より年金額を増やしたい場合に、受給開始年齢を原則65歳から最大75歳まで延ばすことができます[1]。

医師年金のデメリット

  • 掛金段階での所得控除がない:前述のとおり、医師年金の掛金は個人年金保険料控除の対象外であり、掛金を払い込んでもその年の税負担は軽減されません[4]。
  • 途中で脱退すると元本割れの可能性がある:脱退一時金は、払込済保険料に脱退一時金利率を乗じて算出されますが、事務手数料が差し引かれるため、払込済保険料を下回ることがあります[3]。
  • 日本医師会を退会すると強制的に脱退となる:65歳未満で日本医師会を退会した場合、原則として医師年金からも脱退することになります[1]。
  • 加入者は運用商品を選べない:iDeCoのように自分で運用商品や利回りを選ぶことはできません。

医師年金を脱退するとどうなる?

医師年金は、養老年金の受給が始まる前であれば、制度全体からの全部脱退、または加算年金保険料についての一部脱退(10万円単位)が可能です。すでに年金を受給している方は脱退できません[3]。

脱退した場合、払込済保険料を脱退一時金利率によって計算した元利合計額が脱退一時金として支払われます。ただし、1回の払込保険料に対して事務手数料が差し引かれるため、脱退一時金が払込済保険料の総額を下回る可能性がある点には注意が必要です。脱退一時金利率は市中金利を参考に毎年見直されるため、固定的な利率ではありません[3]。

日本医師会を退会するとどうなる?

医師年金は日本医師会の会員であることが加入の前提となっているため、満65歳未満で日本医師会を退会した場合は、原則として医師年金からも脱退することになります[1](医師年金の受給開始後は、日本医師会を退会しても年金の受給を継続できます)。

ただし、留学など、やむを得ない事由による一時的な退会については、特別な措置が用意されているほか、一定の条件を満たしている場合には減額された年金の受給が認められるケースもあります[1]。転職や留学などで日本医師会の会員資格に変動が生じる可能性がある場合は、退会前に取り扱いを確認しておくことが望ましいといえます。

死亡した場合の遺族給付と相続税

公的年金制度(厚生年金・国民年金)に基づく遺族年金は、原則として相続税の課税対象になりません。

一方、日本医師会が運営する医師年金は、公的年金とは税務上の扱いが異なります。医師年金の加入者が亡くなった場合に遺族へ支給される遺族脱退一時金・遺族清算一時金や、遺族年金を受け取る権利は、日本医師会の案内上、「みなし相続財産」として相続税の課税対象になるとされています[4]。

そのため、公的年金の遺族年金と同じ感覚で「遺族が受け取る年金だから非課税」と考えないことが重要です。医師年金に加入している場合は、死亡時にどの遺族給付が発生するのか、その相続税評価額がいくらになるのかをあらかじめ確認しておくとよいでしょう。

医師の相続税については、以下の記事で詳しく解説しましたので、ぜひ参考にしてみてください。

医師年金に向いている人、慎重に考えたい人

医師年金への加入が向いているかどうかは、何を重視するかによって変わります。

運用成績に一喜一憂せず、あらかじめ見込める給付額をもとに老後資金を計画したい医師にとっては、確定給付型である医師年金は選択肢になります。一方で、掛金を払い込んだ年の所得税・住民税をできるだけ軽減したい場合は、掛金が全額所得控除の対象になるiDeCoの方が直接的な効果があります。

また、将来的に転職や留学などで日本医師会の会員資格を維持できなくなる可能性がある医師は、退会時に医師年金からも脱退となり、途中脱退では元本割れの可能性がある点を踏まえて加入を検討する必要があります。

医師年金とiDeCoは、税務上の扱いも仕組みも異なる制度です。両者は併用できるため、それぞれの役割を分けて検討することもできます。

以下に、「医師年金に向いている可能性がある人」「医師年金の活用は慎重に考えたい人」をまとめてみました。

医師年金に向いている可能性がある人

  • 老後に終身のキャッシュフローを上乗せしたい
  • 自分で運用商品を選んだり、相場変動を管理したくない
  • 将来の受取額をある程度見通したい
  • iDeCoを既に利用しているが、さらに老後収入を積み増したい
  • 日本医師会会員を長期継続する見込みが高い

医師年金の活用は慎重に考えたい人

  • 掛金の所得控除を重視している
  • 自分で株式中心に長期運用したい
  • 流動性を重視している
  • 将来、日本医師会を退会する可能性がある
  • インフレへの対応力を重視している

よくある質問

医師年金の加入資格を教えてください。

日本医師会会員で、64歳6か月未満であることが加入資格です。ただし、事務手続きの都合上、申込みは64歳3か月までに行う必要があります。

医師年金の掛金は所得控除の対象になりますか?

なりません。日本医師会は、医師年金は個人年金保険料控除の対象外であると明記しています。掛金を払い込んでも、その年の所得税・住民税が軽減される効果はありません。

医師年金は途中で解約(脱退)できますか?

養老年金の受給が始まる前であれば、全部脱退または加算年金保険料の一部脱退が可能です。ただし、脱退一時金は事務手数料が差し引かれるため、払込済保険料の総額を下回ることがあります。

日本医師会を退会したら医師年金はどうなりますか?

65歳未満で日本医師会を退会すると、原則として医師年金からも脱退となります。留学等やむを得ない事由による一時的退会の措置や、条件を満たす場合の減額年金受給が認められるケースもあります。

医師年金は相続税の対象になりますか?

はい。医師年金の加入者が亡くなった場合に遺族へ支給される遺族脱退一時金・遺族清算一時金や、遺族年金を受け取る権利は、「みなし相続財産」として相続税の課税対象になるとされています。

まとめ

医師年金は、日本医師会が運営する確定給付型の私的年金制度で、給付額があらかじめ見込める点が特徴です。一方で、掛金は個人年金保険料控除の対象外であり、掛金段階での節税効果はありません。この点は、掛金が全額所得控除の対象になるiDeCoとの大きな違いです。

また、途中で脱退すると元本割れの可能性があること、日本医師会を退会すると原則として医師年金からも脱退することになる点も、加入前に押さえておくべきポイントです。
死亡時の遺族給付は相続税の課税対象になり、生命保険金や死亡退職金の非課税枠の対象にはならないため、相続対策を検討する際にもあわせて確認しておく価値があります。加入を判断する際は、公式サイトのシミュレーションツールで自分の条件での受取額を試算したうえで、iDeCoなど他の制度と組み合わせて検討することをおすすめします。


「医師のための金融リテラシー講座」のご紹介

この記事で扱った医師年金やiDeCo、年金受給時の税金といったテーマは、私が執筆したTips記事「医師のための金融リテラシー講座」で扱っている内容の一部です。
医師は、金融を学ぶ機会がほとんどないにもかかわらず、複雑な金融判断を迫られる場面に直面しがちです。
金融知識は、お金に関するさまざまな判断を自分自身で考えて行うための土台となるものであり、一度体系的に学んでおけば、その後の人生で繰り返し役立つはずです。
興味のある方は、ぜひ講座の概要だけでも、覗いてみてください。


<出典>
[1] 日本医師会 医師年金の特長 https://nenkin.med.or.jp/about/
[2] 日本医師会 医師年金 加入について https://nenkin.med.or.jp/guide/guide01.html
[3] 日本医師会 医師年金 脱退について https://nenkin.med.or.jp/guide/guide08.html
[4] 日本医師会 医師年金 税金の取り扱いについて https://nenkin.med.or.jp/guide/guide09.html
[5] 国税庁 No.1135 小規模企業共済等掛金控除 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm
[6] 公益財団法人 年金シニアプラン総合研究機構「医師年金制度:医師向けの主要ポイント」(2023年9月、日本医師会公式サイト掲載) https://nenkin.med.or.jp/info/pdf/20240109.pdf
[7] 日本医師会 医師年金 ライフステージ別加入例 https://nenkin.med.or.jp/lifestage/advice/
[8] 厚生労働省広報室 iDeCoの拠出限度額、加入可能年齢が引き上げられます(2026年12月制度改正) https://digitalpr.jp/r/124500
[9] 国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

高所得層のための「キャピタル研究室」を運営しています。

コメント

コメントする

目次